夫婦共有の自宅不動産、いわゆる「ペアローン」の住宅ローンの場合で、夫が住宅ローン以外にも多額の借金を抱えて個人再生を検討しています。この場合に、夫が単独で個人再生手続申立てを行い、住宅資金特別条項を利用することは可能でしょうか?

「ペアローン」の場合、夫婦ともに個人再生手続申立てを行う必要があります。

 ペアローンとは、夫と妻がそれぞれ自分の収入を基準にして、同じ金融機関から夫のローン部分と妻のローン部分に分けて、2本立ての金銭消費貸借契約を締結して、夫婦が共同して住宅購入資金を調達し、共有不動産である住宅の全体に抵当権を別々に設定するローンのことをいいます。(ペアローンは、リレーローンとは異なります。)

 この例でいくと、夫が個人再生申立てをし、住宅資金特別条項を利用しようとした場合、妻を債務者とする抵当権が民事再生法198条1項ただし書き前段の「住宅の上に第53条第1項に規定する担保権が存するとき」に該当し、住宅資金特別条項の利用ができないのではないかが問題になります。

 しかし、民事再生法198条1項ただし書きの趣旨は、当該抵当権が実行されることにより住宅資金特別条項が無意味になってしまうことを回避することにありますから、当該抵当権の実行が法律上あるいは事実上されないような場合には、これを認めて差し支えないはずであるとの考え方に基づき、同一家計を営んでいる夫婦ペアローンの場合、①同一家計を営んでいる者が、いずれも個人再生手続申立てをし、②いずれも住宅資金特別条項を定める申述をすること、の二つの要件を満たすことを前提として、いずれも住宅資金特別条項の利用を認めてよいとする運用が行われています。

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