事案の概要
父から事業を引き継いだが震災やコロナ禍の影響で贈答品等の需要が都度減少し経営を存続するに足る売上が維持できなくなったという贈答品等販売会社とその運転資金の借入れについて連帯保証をしていた代表者がともに破産手続を申し立てた件について破産管財人に選任されました。

主な管財業務の内容
法人に在庫商品はなく什器備品の大半が処分済みであったため、法人については大きな管財業務はありませんでした。

他方で代表者個人については住宅ローンのある自宅不動産が存在していたため、その売却が主たる管財業務となりました。

自宅不動産について査定を取り買受人を募ったところ、代表者の親族に買取りの意向があるということでしたので適性価格での買取りが可能か打診を行いました。

そうしたところ、査定額と同水準の買取り金額の提示があったため、自宅不動産については親族に売却することにしました。売買金額を用いて住宅ローン残額及び不動産売却諸費用を清算し、多少の配当可能財産を形成することができました。

本事例の結末
法人については初回の債権者集会において異時廃止となり、代表者個人については債権者に少額の配当を実施した上で追って終了となりました。

今回は法人破産に伴う代表者破産の事案であったため代表者個人の免責関係に問題はなく、免責不許可事由不該当の意見を述べたところ、代表者個人については免責許可決定がなされました。

本事例に学ぶこと
破産事件において破産者名義の不動産が存在する場合、親族が不動産を買い取るという処理が行われることがあります。

その際、重要となるのは親族であるからといって安い値段で不動産を買えるわけではないということです。破産手続においては適正価格での財産処分が求められ、それは売買の当事者が親族である場合にも変わりません。不動産であれば査定価格と同水準の買取りを打診されるため買主として手を上げる際にはそのことを認識しておく必要があります。

弁護士 吉田 竜二