事案の概要
知人から外国のホテルの会員権に投資すれば大きなリターンが得られると聞き、当初は借り入れた100万円を投資したが、実際に配当金が入るようになり、自宅マンションを売却した金員等を順次投資したところ、その後、コロナ禍の影響でホテル利用客が激減し、まったく配当金が得られなくなった、返済については配当金をあてにしていたため返済が滞り破産手続申立てに至ったという事案について破産管財人に選任されました。
主な管財業務の内容
ホテル会員権はまだ破産者の手元に残っていたためその売却の可否の検討と一連の投資行為が免責不許可事由に該当するかどうかの判断が主な管財業務となりました。
ホテル会員権について投資の窓口となっている会社に問い合わせを行ったところ、配当ができない状態であるため買い手が見つかるか分からない、見つかったとしても価格は期待できないとの回答でした。買い手が見つかるかどうか分からないものについて徒に時間を費やすわけにもいかないため、破産者の親族等で買い取ってくれる人物がいないか並行して打診することにしました。
ホテル会員権の投資については本件の経過を含めた全体としてみるとギャンブル性が高いと言わざるを得ず、そこに多額の借入金をつぎ込んだ行為は浪費的な性質があると判断しました。
本事例の結末
正規のルートでは買受人が現れなかったため、ホテル会員権については破産者が支出した金額の10%の価格で破産者の親族に買い取ってもらうことにしました。
それにより債権者に対する配当原資が形成されたため、債権者に対して一部配当を行い、破産手続は終了となりました。
免責手続については、ホテル会員権に対する投資は浪費的なものとして免責不許可事由に該当すると言わざるを得ないが、破産者は今回が初めての破産手続申立てであること、その後、投資等から離れて収入の範囲内の生活を送っていること等を理由に裁量免責が相当であるとの意見を述べました。それを踏まえ、後日、裁判所から免責許可決定が下されました。
本事例に学ぶこと
海外のホテルの会員権を購入するとホテルに滞在した人数に比例した配当金が入ってくるという形式の投資話があります。
投資金額が増えると配当金の割合が増えるという仕組みで更なる投資を誘うものですが、ホテルの稼働状況に応じて配当金が大きく増減するため、配当金が入ってこないと返済等が間に合わないというギリギリの状態まで投資を続けるべきではありません。
当然のことですが、投資については怪しいものには手を出さない、手を出すとしてもあくまで余剰資金で行うということが重要となりますので、ご注意いただければ幸いです。
弁護士 吉田 竜二