紛争の内容
さいたま地方裁判所から、個人の破産者の破産管財業務を依頼され、グリーンリーフ法律事務所の時田剛志弁護士が破産管財人を担当しました。
破産者には、個人債務者に対する貸付金があり、回収見込の調査、及び、免責調査を中心とする業務を担うことになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
1 面談
破産者と面談を行い、債務の原因、申立内容に間違いがないことなどを聞き取りました。また、本件は免責調査観察型のため、申立人および申立人代理人による記名押印の誓約書を受領しました。

家計全体の状況について、食費が高額であったため聞き取りを行ったところ、持病の影響で食事制限に対応するための出費が含まれることが分かりました。なお、家計収支表の不正確と思われる部分については、指導を実施しました。

その他、借入の経緯や使途を詳しく聴き取り、また、貸付金の回収に向けた過去・現在の状況を細かく聴取しました。

2 債権回収
貸付金を回収するにしても、事実関係と証拠を確認しておく必要があるのは、通常の債権回収の事案と同様です。そのため、上述の面談で聴き取りをした内容を踏まえて、相手方に対し、管財人より、内容証明郵便、および特定記録の送付を行い、支払の請求を開始しました。

すると、相手方からは経済的事情から2回の分割で支払いたいという回答があり、初回は速やかに振込を、二回目は一か月以内に振込を求め、実際に、全額を回収することができました。

3 免責調査に対する意見
債務の経緯や原因については、浪費が借り入れの大部分を占めておりました。その背景には、家族の病気等もありましたが、浪費は浪費です。したがって、免責不許可事由に当たります。もっとも、破産を進めるに至る経緯や破産手続における債務者の反省・報告状況、債権者から厳しい意見等は寄せられなかったことを踏まえると、一度目の破産でもあり、裁量免責が相当であると判断し、実際に裁判所は免責許可を行いました。

4 そのほか、随時、破産者宛の転送郵便物を開封し、内容の確認を行いました。

本事例の結末
結論としては、破産者の財産としては預貯金などは少額のため自由財産として拡張し、裁量免責となり、破産手続は二度の債権者集会で終結しました。

本事例に学ぶこと
破産管財人の業務の一つとして、債務者の債権・資産を回収し、債権者に対する配当原資とするというものがあります。
債権回収の原因は様々ですが、今回のように、個人債務者に対する比較的少額の債権ですと、費用対効果の問題も考えながら、破産管財人としては、債権者から文句が出ないように、債権回収に向けた厳格な検討が必要です。
本件では、書面の通知のみで短期間に債権を回収できたため、交渉が効を奏した事案でした。

弁護士 時田 剛志