紛争の内容
公立学校で教員をしているAさんは、同じく教員をしている夫Bとペアローンを組み令和元年に一戸建てを購入しました。
しかし、コロナ禍や、生まれたばかりの子Cの育児にも悩み精神的に不安定になったため、高級品の購入など
浪費などをするようになってしまいました。
Aさんも夫Bも十分な収入があったため、浪費をしても当初は生活に支障もなかったものの、浪費が止まらぬ状態で返済が徐々に追い付かなくなり、ついには月々の返済をリボ払いに変更せざるを得なくなりました。
家計はAさんに任され、夫Bは全く関わっていなかったため、Aさんの債務は雪だるま式に大きくなってしまい、遂に返済ができないと考えるに至り、弁護士に相談することにしました。
購入した一戸建ては、どうしても手放すことはできないと考えたため、住宅資金特別条項を定める形での個人再生を目指すことにしました。
交渉・調停・訴訟等の経過
通常、債務者が所有する不動産が共有で、その共有者も不動産に抵当権を付けられているという場合、
債務者だけが単独で個人再生をして住宅資金特別条項を定めるということはできないというのが原則です。
しかし、本件では夫Bはこの住宅ローン以外に債務はありませんでしたし、教員という安定した職に就いていたため、
夫に関しては個人再生をする必要は全くありませんでした。
そこで、申立に当たっては、上記事情を踏まえ、個人再生委員が就く形ではありますが、Aさん単独での個人再生を認めてもらえるよう、裁判所にも説明をしました。
本事例の結末
Aさんは、無事個人再生手続開始後の履行テストなども滞りなく行い、再生計画の認可決定を受けることができ、
無事手続を終えることができました。
本事例に学ぶこと
共働き家庭が増えている現在、自宅について住宅ローンが残っているという個人再生希望の方の中には、当該住宅ローンが「配偶者とのペアローンになっている」という方も少なからずおられるのではないでしょうか。基本的には、そのような場合で一方の配偶者だけ個人再生をするということはできないということになりますが、住宅資金特別条項の趣旨から、もう一方の配偶者におよそ抵当権を実行される恐れがない場合などは例外的に認められることもあります。具体的な見込みは、弁護士に相談をしてみて、ご検討をいただければと存じます。
弁護士 相川一ゑ