紛争の内容
依頼者の下に、クレジット会社から突然約300万円の支払いを求める通知書が届きました。同封されていた書類には、契約番号や現在の残高だけが記載されていました。依頼者は、そもそも借りた覚えのない、聞いたことがないクレジット会社からの請求に戸惑い、弁護士に相談するに至りました。
打ち合わせにあたり、書面一式を持参いただき、内容を見てみました。すると、請求書の発送元は、債権回収会社であり、別のカード会社から依頼者に対する債権の譲受けを受けた旨の記載がなされていました。もっとも、契約番号や現在の残高しか記載されておらず、いつ何に使ったのか・借りたのか全く分かりませんでした。さらに、依頼者はそもそも当該別のカード会社と関わりをもったことすら記憶にないとの話しでした。
そこで、依頼者に対し、通知書を送ってきた債権回収会社に電話してもらい、支払う・支払いを待って欲しいという内容の発言を絶対にしないよう注意した上で、取引履歴を送付するよう依頼してもらいました。
交渉・調停・訴訟などの経過
後日、債権回収会社から届いた書面を見ると、ローン契約書の写しが添付されており、確かに依頼者の名前と押印がされていました。もっとも、当該取引をしたのは、平成一桁代の古い時期のものであり、さらに、取引履歴は何も送付されてきませんでした。
筆跡や思い当たることはないか依頼者に確認したところ、知り合いに名前を騙られたであろうことが分かりました。ただ、取引自体があまりに古く、そもそも取引履歴を開示しない時点で、これは時効にかかった不良債権の請求であるだろうと目星を付けました。
そこで、時効援用通知を当該債権回収会社に送り、一定期間内に返答がない場合には、時効援用を認めるものとみなす旨、内容証明郵便を送りました。
本事例の結末
想像どおり、債権回収会社からは1ヶ月が経過しても、何らの連絡もありませんでした。どうやら、当該債権は、時効にかかっているものであったようです。
本事例に学ぶこと
本件のように、債権回収会社が、回収できないまま長期間が経ってしまってもはや回収が望めない金銭の貸し付け・ショッピング立替金の債権を安価で買い取り、これを債務者に請求するケースがあります。債権回収会社としては、数打てばあたるとの認識で、時効援用されるリスクを承知の下、不良債権を買い取って請求をしてくる場合があります。このような通知に不安を覚え、債権回収会社に電話して支払い義務があることを認めたり、支払いを待ってもらったりしてしまった場合、時効援用をすることができなくなってしまいます。
身に覚えのない請求がきた場合、弁護士に相談してみることをお勧めします。