事案の概要
共働きの収入を前提に住宅ローンを組んだが、出産に伴い妻の収入が低下し、その補填として借入れ等を開始した、その後、子どもの成長により妻の収入が回復したが、その頃にはそれぞれの負債が大きくなっており、継続的な返済は困難と感じたため、それぞれが個人再生手続の申立て(夫:給与所得者等再生、妻:小規模個人再生)を行ったという事案でした。
双方が個人再生手続を選択するというケースはあまり多くなく、その中でもそれぞれが異なる個人再生手続を選択しているという状況でしたので、履行可能性を中心に検討していくことになりました。
主な業務の内容
まずは申立人及び代理人弁護士と面談を行いました。
夫が給与所得者等再生を選択した理由、妻が自己破産ではなく個人再生を選択した理由、今後の継続的な収入・支出見込み等を確認しました。
手続選択に関しては家族構成や浪費的な側面があることを考慮して決定したとのことであり、現状の収入見込み等については安定しているようでした。
個人再生手続では実際にいくらを返済していくのかの計算等が重要になります。
小規模個人再生事件では、債権額基準(債権額の20%を返済額とする)か清算価値基準(保有する財産額に調整を加えた金額を返済額とする)により返済額が決定され、給与所得者等再生事件では、それらに可処分所得基準(年間給与から家庭における定型の生活費等を除いた計算上の可処分所得の2年分を返済額とする)が加わり返済額が決定されます。
給与所得者等再生の場合、可処分所得基準が採用されることで返済額が大きくなる可能性があるため、その計算は慎重に行う必要があります。
裁判所と協議した結果、本件では直近の妻の収入が扶養の範囲を超えていたため、当初、申立人が想定していた返済額を超える可処分所得の算定となりました。
申立人の側にその旨を伝え、返済期間を3年か5年に延長することで対応することとしました。
本事例の結末
以上を踏まえ、都度のタイミングで裁判所に個人再生委員としての意見書を提出し、返済期間5年、夫については可処分所得基準での返済を行うという内容で再生計画認可となりました。
本事例に学ぶこと
債務整理を行う場合、自分に適した手続は何かという判断を誤らないことが最も重要です。
個人再生手続がなぜ小規模個人再生と給与所得者等再生に分かれているのか、その手続や返済額はどのように異なるのか等については事前に慎重に検討すべきです。
給与所得者等再生は、再生計画についての債権者の同意を不要とするというメリットがありますが、可処分所得基準により多額の返済をしなければならない可能性があるというデメリットがあります。
本件は大口の債権者がいるわけではないため前者のメリットを享受する必要はなく、小規模個人再生でも対応できた事案でした。
手続選択によりその後の状況が大きく変わってきますので、手続選択をどうするか悩んでいる、専門家から受けたアドバイスの内容に疑問を抱いている等の場合には是非一度グリーンリーフ法律事務所へご相談いただくことをお勧めいたします。
弁護士 吉田 竜二