紛争の内容

会社員をしていた30代男性のAさんは、勤務先がいわゆるブラック企業であったことから、仕事が続けられず、新たな就業先を見つけ、引っ越しもしました。それまでの給与は安く、生活費を捻出するために借金もしていましたが、それ以外に自分の趣味で衣料品などもカードで買うといった生活を続けていました。幸い、友人が経営する会社に再就職することができ、そこでの待遇は福利厚生も整った安定したものでした。しかし、前職の期間中にできた借金は、遅延損害金も含めると300万円以上になってしまい、どんなに生活費を節約しても、借金を返しきることは難しいと感じるようになり、弊所にご相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟などの経過

Aさんの借金は生活費の捻出だけではなく、カードによるショッピングで浪費をしていた部分も多かったため、破産をするとすれば免責不許可事由に該当する可能性もありました。確実に、かつ自身の生活と並行して進めていく債務整理の方法としては、個人再生が良いと考えたAさんは、小規模個人再生を申し立てることを決めました。ただ、Aさんには現在勤めている会社に在籍している実績が1年未満しかありません。個人再生は、再生計画が確実に履行できるようにするため、勤務継続の可能性が乏しい場合には裁判所からその点指摘がされることもあり、このような勤務実績1年未満というAさんの状況では、注意が必要でした。この点、Aさんの勤務先は友人の縁故もあるものであり、その友人からも長く勤務してもらうことを前提とした説明を受けて就職していました。そこで、申立ではその点を強調し、現時点では勤務実績が長くはないけれども、再生計画の期間3年間は継続できる見込みであることを裁判所にきちんとお伝えしました。

本事例の結末

受任通知発送後、特に債権者からの意見もなく、本件については小規模個人再生を選択することとし、裁判所に申し立てをしました。
結局個人再生委員が就くこともなく、Aさんは履行テストを重ねつつ、毎月の家計簿の見直し等を根気強く続けることができたため、3年での再生計画の認可もいただくことができました。

本事例に学ぶこと

ご本人の経済的な信用へのダメージは、個人再生の方が破産よりも小さいとも考えられますが、返済計画を前提とする個人再生には、計画を履行できると裁判所に判断してもらうことが不可欠です。また当然ご本人のやる気が不可欠なため、この点はご本人とよく協議をして手続選択をする必要があると感じました。

弁護士 相川 一ゑ