事案の概要
以前に司法書士に破産手続申立てを依頼し、受任通知を発送してもらったが、その後、転居するなどして処理が滞っていた、転居先での生活が安定してきたため、別の司法書士に依頼し破産手続申立てに至ったという事案について、破産管財人に選任されました。
主な管財業務の内容
破産者は転居後就職した会社から生活費等の借入れを行い給与天引きの方法で返済を継続していたため、受任通知後の返済として勤務先から返済分の返還を受けることができないか検討しました。勤務先が破産等の事実を知った時期が不明確であったため、確実と思われる時点を前提に勤務先と交渉しその一部の返還を受けました。
その他、破産者には目ぼしい財産が存在しなかったため、自由財産拡張の処理を行いました。
破産者が破産に至った主たる原因は収入を超える生活支出を継続していたことにあったため、その点については浪費的と判断しました。
本事例の結末
勤務先への返済については一部返還を受けるという処理を行い、その他、債権者に配当すべき財産は存在しなかったため、初回の債権者集会にて破産手続廃止となりました。
免責手続きにおいては浪費的な側面があることを指摘しましたが、結論としては裁量免責相当の意見を提出し、裁判所もそれに従い免責許可決定をしました。
本事例に学ぶこと
受任通知発送後は借入れや返済を行わないことが原則ですが、給与天引きで事実上勤務先に対する返済だけを継続しているというケースはそれなりに存在します。
勤務先が返済不能を認識した以降の天引分は返還の対象となり、免責不許可事由との関係もありますので、給与天引きでの返済については注意が必要です。