紛争の内容
契約会社員をしていたAさんは、体調を崩し、仕事に就けなかった期間中の生活費を稼ごうと、カードローンなどから借り入れをし、ネット上で知った「デジタルせどり(ネット上売られている商品を安く仕入れて高く販売し、差額で利益を得ようとするもの)」という投資に手を出してしまいました。
最初は少し利益も出たため、Aさんは更に借入額を増やしてそれを投資の資金に充ててしまいましたが、結局大きな損失を生んでしまい、借金の返済も適わなくなったため、最終的に400万円以上の借金だけが残る形になりました。
Aさんは体調不良が悪化していたこともあり、それまで勤めていた会社も辞めざるを得なくなり、アルバイトで生活をするようになりましたが、既にできた借金は到底返せないと思うようになり、破産手続を申し立てることにしました。

交渉・調停・訴訟等の経過
Aさんの破産手続は、体調不良による就業不能という不幸な要因もあったものの、借金の経緯が投資の資金を得るためであったことから、管財事件となりました。
本件において、管財人は免責不許可事由を調査することになるため、Aさんはその投資の仕組みや、借金が増えていった経緯、そしてその後反省し、収入の範囲で生活をしていくこと等を管財人に説明・約束しました。

本事例の結末
結局、Aさんは見るべき財産もなく、また免責不許可事由は認められるものの、破産手続の中で誠実に破産に至る経緯を反省し、現在は慎ましく生活しているということを踏まえ、裁量免責が認められました。

本事例に学ぶこと
投資などが多重債務の原因にある場合、免責不許可事由があるとして、管財事件になることが予想されます。
財産はなくとも、管財人から借金の経緯や今後の生活建て直しについて厳しく調査を受けることになりますが、
絶対的に免責が認められないというわけではありません。
きちんと破産手続に対応し、反省をすれば、裁量免責が認められるケースもあるので、まずは免責不許可事由がある事案であっても、弁護士に相談し、破産手続の可否を検討すべきと思いました。

弁護士 相川一ゑ