紛争の内容

Aさんは20年近く勤めていた会社を退職後、配電設備の工事を行う個人事業を始めましたが、業務委託契約を結んだ発注元会社から課される研修や資格取得の条件が厳しかったのと、一緒に作業を行う職人がなかなか定着しないことにより、思ったように利益を上げることができませんでした。
Aさんには妻(無職)と2人の子供(中学生、小学生)がおり、住宅ローンの残も2,000万円以上抱えていました。
リースを含め、事業資金のために負った借金は約1,000万円に膨らんでいました。
自宅を守りながら借金の整理をしたいということで、Aさんは妻とともにご相談に来られました。

交渉・調停・訴訟などの経過

Aさんの資産状況を確認したところ、Aさん名義の生命保険の解約返戻金が多額にのぼることがわかり、財産の総額(400万円)が、一般債権から導き出される基準額(1,000万円×1/5=200万円)を上回ったため、清算価値弁済(高い方の、400万円を弁済する)となりました。
Aさんは今の発注元から仕事を受け続けるには限界があると感じており、新たに別の会社から業務を受注する形態に切り替えたところ、順調に業績を伸ばすことができ、家計も安定して余剰が出る状態に回復しました。
継続的な収入を得る見込みを証明するため、Aさんには今後数年間の事業計画書や資金繰表を作成してもらい、それらを裁判所に提出しました。
子供が学齢期でしたので、今後学費がかかることも考慮し、返済期間は念のため4年として、再生計画を立てました。

本事例の結末

無事に再生計画案が認可され、Aさんの負債(住宅ローンを除く)は約1,000万円から約400万円に圧縮、月々の返済額は2分の1で済むようになりました。

本事例に学ぶこと

Aさんは地方にお住まいでしたが、当事務所にお越しになる前に地元の法律事務所で相談したところ、弁護士から「個人事業をやっている人は、再生はできない」と言われて断られたそうです。
もちろん、給与所得者(会社員等)と比べると、履行可能性(特に継続収入を得る見込み)の判断で厳しく審査される側面はありますが、個人事業主だからといって一概に個人再生ができなくなるわけではありません。
諦めることなくインターネットで当事務所を探し出し、他県からお越し下さったAさん。その負債を軽くするお手伝いができて、本当に良かったと思います。