自己破産の手続き中には、してはいけないことがいくつかあります。
してはいけないことなので、万が一してしまうと、破産による免責(債務が無くなること)がなされない可能性があります。
そのため、自己破産手続き中には、どのようなことがしてはいけないことなのか、予め理解しておくことが大切です。
そこで、破産手続き中に、してはいけないことについて以下具体的に解説していきます。

破産手続き中にしてはいけないこと

してはいけない7つのこと

1 新たな借入れ


自己破産手続き中あるいは自己破産手続きに入る直前の借入れなどはNGです。
返済するつもりがなく、あるいは返済できないことを十分に認識した上で借入れを行うことは、詐欺罪などの罪に問われる可能性もあります。

2 財産隠し


これも当たり前ですが、絶対にNGです。免責不許可事由にあたります。
意図的に自らの財産を隠すことはもちろんですが、仮に意図的でなくても、以下のような行動は、財産隠しを疑われることになります。

・自分名義の口座をすべて開示・申告しない(隠し口座がある)
・口座から現金を引き出し、それが使途不明となっている
・資産価値の高い財産や現金を第三者に預ける、譲渡する
・家族や第三者に財産の名義を変更する

これらは意図的かどうかにかかわらず、財産隠しをしたと疑われても仕方のない行為です。
そのため、自己破産手続きにおいては、このような行為を行わないよう十分に注意しましょう。

3 債権者隠し


自己破産手続に入ると、債権者平等の観点から、全ての債権者への返済ができなくなります。もちろん、債権者が友人や知人、家族、職場などである場合も同様ですし、そのような身近な人が保証人となっている場合でも同じです。
そのため、そのような友人、知人、家族、職場からの借入れや、そのような人たちが保証人となっている債務だけは別に返済したいと考えて、あえて意図的に破産手続上の債権者には挙げないということもあり得ます。これも免責不許可事由にあたりますので、NGです。

4 一部の債権者への返済(偏頗弁済)


上記3とも関連しますが、一部の債権者(特に友人や知人、家族、職場など)に優先して返済してしまうと、偏頗弁済に該当し、債権者平等の原則に反することになるため、免責が認められなくなってしまいます。
偏頗弁済とは、特定の債権者に対して、借金の返済や担保の提供をすることです。

5 裁判所や破産管財人、申立代理人弁護士への非協力


自己破産手続き中は、裁判所や破産管財人、申立代理人弁護士に様々な書類を提出する必要があります。また、実際に裁判所や破産管財人、申立代理人弁護士の事務所まで足を運ばなければならない場面も出てきます。
そのため、自己破産の手続中は、裁判所や破産管財人、申立代理人弁護士から色々な指示を受けるケースが多々あります。
これらの指示に従わない状況が続くと、免責が認められない可能性が出てきますので、その都度協力的に対応すべきです。

6 無駄遣い


当然ではありますが、無駄遣いによる借金は、免責不許可事由に該当することがあります。
例えば、生活上必要のない以下のようなことへの支出です。

・ギャンブル
・風俗
・高級飲食店の利用
・高級ブランド品の購入 など

7 換金行為(クレジットカードによる現金化)


これもNGです。
換金行為(クレジットカードの現金化9とは、例えばクレジットカードで購入した商品を、すぐに売却することで現金を手にすることです。
例えば、5万円のブランドバッグをクレジット払いで購入し、質屋で3万円に換金する行為などです。
これも、免責不許可事由に該当するので、やめましょう。

破産手続中にできなくなること

破産手続き中にしてはいけないことに関連して、物理的にできなくなることもあります。
以下解説していきます。

①一定の職業に就くことができなくなる


破産手続開始決定が出ると、一定の職種に就くことが制限されます。
この制限される職種に就いている場合、破産手続期間中はその仕事が出来ません。
制限職種は、例えば弁護士、司法書士、税理士、宅地建物取引士、公認会計士、土地家屋調査士などのいわゆる士業のほかにも、警備員、生命保険募集人、証券外務員、貸金業者などがあります。

②引越しや旅行が自由にできない


破産手続が「管財事件」となった場合は、破産手続中、裁判所の許可を得ずに居住地を離れることが禁じられています。つまり、破産者は、裁判所に申立てをして、その許可を得なければ、その居住地を離れることができません。

「管財事件」とは、裁判所に選任される破産管財人が、破産者の財産の調査などを行う場合の手続になります。そのため、破産者は、いつでも破産管財人の調査に協力できる状況になければなりません。
そのため、裁判所や破産管財人は、破産者の所在を把握している必要があり、そのため居住地から一定期間離れる場合には、裁判所の許可を得る必要があるのです。

③郵便物を自分で受け取ることができなくなる


これも、管財事件に関する制限ですが、破産手続開始決定後、通常は手続きが終了するまでの間、破産者宛の郵便物は破産管財人に転送され、破産管財人によって、郵便物の内容を確認されます。
これは、破産手続において、破産者の財産や債権者などに漏れがないかを破産管財人が確認するためです。
したがって、破産手続期間中、破産者は郵便物を自分で直接受け取ることができません(なお、破産管財人が郵便物の内容を確認した後、管財人から郵便物の返却を受けることになります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小野塚 直毅
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