破産者の方が特に気にされることですが、自己破産の手続き中は、生活面などでいくつか制限を受けることになります。
このコラムでは、それらの制限や破産中の生活がどのようなものになるのかなどについて解説します。
1 自己破産の流れや自己破産にかかる時間
(1)自己破産の流れ
いわゆる「自己破産」とは、裁判所を利用した手続です。自己破産のための申立書や添付資料などの書類を裁判所に提出することが手続のスタートです。
ただ、裁判所への書類提出の前に、十分な準備を行う必要があります。弁護士に自己破産をご依頼いただく場合、弁護士との打合せや毎月の家計簿の作成・提出など、依頼者の方にはやっていただくことがたくさんあります。もちろん、わからないことなどがあれば、弁護士がサポートします。
自己破産の最終的な目標は、裁判所から免責許可決定を得ることです。免責許可決定とは、破産者の債務を免れさせるという決定であり、これが確定すると、借金を返済しなくて良いことになります。
(2)自己破産にかかる時間
債権者に配当できる財産がないような場合には同時廃止事件になる可能性があります。
他方、免責不許可事由が見込まれたり、債権者に配当し得る財産があったりする場合、管財事件になる可能性があります。
同時廃止事件では、破産申し立てをしてから免責許可決定が出るまで通常は、2~3ヶ月かかります。
これに対し、管財事件では、破産申し立てをしてから免責許可決定が出るまで通常は、6か月前後かかります。
このように、自己破産の申立については、申立てから終了まで最短でも3ヶ月はかかると考えていただいた方が良いでしょう。
2 自己破産の申請中に制限されること
自己破産を申請すると、生活面などで制限されることがいくつかあります。以下では、そのうちの代表的なものについてご紹介します。
(1)財産の処分が制限される
自己破産申請中は、財産の処分が制限されます。
管財事件では、破産管財人が破産者の財産を管理することになるため、破産者が自由に財産を処分することはできません。
ただし、自由財産(破産者が自由に使うことのできる財産)にあたる財産は、自由に使うことができます。
自由財産には、99万円以下の現金、法律上差押えが禁止されている財産などがあります。
(2)職業が制限される
自己破産の申請中は、特定の職業を行うことができません。
具体的には、弁護士や税理士などの士業、警備員や生命保険募集人などがこれにあたります。
他人の財産を預かって管理する業務を担う職業は、自己破産申請中に制限を受けるということです。
ただし、免責許可決定が出れば、この制限は解除され、いままで通りに働くことができますし、新たに資格を取得することもできます。
(3)居住地が制限される
自己破産の手続をしている期間中、破産者は裁判所の許可を得ずに現在の居住地を変更することや、長期間の旅行をすることはできません。
破産者は、裁判所や破産管財人に対し、所有する財産の内容などについて、いつでも説明できる体制でいなければならないからです。
裁判所や破産管財人は、破産者の財産調査や管理を行うために、破産者の居所を常に把握しておくことが必要となります。
そのため、居住場所を変更するときや長期の旅行に出かけるときには、事前に裁判所の許可を得ることが必要とされているのです。
なお、たとえばお墓参りや冠婚葬祭のために一時的に2~3日だけ帰省するなど、合理的な旅行であれば許可を得ることができるでしょう。しかし、娯楽目的の長期旅行や海外旅行などは認められない可能性が高いでしょう。
(4)金融機関などのブラックリストに載る
破産した場合、信用情報機関に信用事故を起こしたことが登録されます。そのため、破産後しばらくの期間は、新たな借り入れをすることは事実上できなくなります。
信用情報機関には、主に銀行系のKSC、主に信販系のCIC、主に消費者金融系のテラネット等がありますが、破産や長期延滞などの事故情報は相互に情報交換される仕組みになっています。
(5)官報に載る
政府発行の機関紙「官報」への名前の掲載、及び本籍地の「破産者名簿」に記載されます。
「官報」は一般に販売されているものでない為、普通の人が目にすることはありませんし、「破産者名簿」も同様です。
名簿に記載されるのは、管財人が選定されている場合のみで、しかも自己破産宣告して手続きが完了したら削除されます。
戸籍や住民票に破産に関する記載が行われることはありませんし、実際の所、事実を知られるのは、裁判所や役所などの公的機関、債権者、弁護士だけで、周囲の人間に知られる心配はほとんどありません。
3 自己破産にあたって気を付けるべきこと
破産申請中には気を付けるべきことがいくつかあります。以下ではそのうちの代表的なものについてご紹介します。
(1)裁判所の指示にはしっかり従う
破産開始決定が出されると、破産が裁判所の手続に載ることになります。
裁判所から破産者の財産関係などについて質問や指示が出されることがあります。裁判所からの指示や質問にはしっかりとした理由がありますので、破産者としては、真摯に対応し、質問には正直に答えることが重要です。
(2)破産管財人の指示にはしっかり従う
事案によっては、破産管財人という弁護士が選任されることがあります。破産管財人とは、裁判所を補助する機関であり、破産者の財産状況などを調査し、その結果を裁判所へ報告するという職務を負っています。また、破産者による不適切な財産処分などがあった場合には、それを取り戻すというようなこともします。
そのため、裁判所からの指示同様、破産管財人からの指示にもしっかりと従うことが重要です。
(3)無駄遣いや一部の債権者への支払いはしない
無駄遣いや浪費(収入に見合わない消費行為)などは、免責不許可事由に当たり、免責が認められない可能性があります。
そのため、破産申請中はもちろん、弁護士にご依頼いただいた以降は、破産手続きが終わるまでは、無駄遣いや浪費は避けるべきです。
また、一部の債権者への支払いは、偏波弁済(不公平な弁済)として、免責不許可事由に当たり、免責が認められない可能性があります。
親族や友人への返済であっても偏波弁済に当たりますので、注意が必要です。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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