倒産法人の代表者の個人再生手続と、法人破産申立の要否

小企業の法人の倒産は、法人の借入の連帯保証人になっている代表者の倒産が連鎖することがよく見受けられます。

同企業の法人破産の申立てと共の、代表者の個人破産を同時か、法人破産申立を先行し、その後速やかに代表者個人の破産申立をすることが通例です。

さいたま地裁での運用も、特別の事情のない限り、法人代表者の破産手続開始決定は、法人破産の申立てを待って、同時に開始決定(破産宣告)をすることになります。

つまり、法人の破産申立をせずに、法人代表者個人に対してのみ、破産手続きを開始することはありません。

これは、法人についての債権者に対して、破産手続きをとることにより、破綻会社において、管財人の関与により債権者の平等をはかり、配当がない場合であってもせめて債権者の貸し倒れ処理に協力し、税務上のメリットを享受させることにあると認識しています。
それ故、破産申立を行うことは、法人経営者である代表者の経営責任の全うの意味を有するものと考えます。

法人の代表者が会社倒産後、再就職し、生活再建を果たし、住宅ローン付個人再生手続きを利用して、住宅ローン以外の債務の圧縮する債務整理をする場合、破綻法人の破産申立が必須であるか否かについては、さいたま地裁の運用では確定しておらず、個々の事案によるようです。

ご存知のように、個人再生手続きにおいては、再生計画に基づく最低弁済額は、清算価値を上回ることが必要です。

小規模企業の代表者は、その運転資金に、自己資金を投入していることが多くあります。
破綻企業の破産手続において、代表者の貸付金の回収の可否・その多寡は破産手続きの経過次第といえます。

また、破産管財人による否認権の行使など破産財団の財産充足行為にも期待されることからも決算書類上だけでは判断できないものもあります。そして、同代表者には、企業の経営者の責任を全うする、全うすべきであるという側面があります。

このような視点から、裁判所が法人破産申立をせずに、個人再生手続きの利用をそのまま認めるということは想定しにくいものです。

よって、破綻企業の代表者の個人再生だから、法人破産の申立てをしなくてよい、その必要はないという単純なものではないことをご理解ください。