Aさんは友人が経営する運送会社に勤務していました。妻と子供が二人の四人家族で、入社してからしばらくは景気もよく、お給料も良かったので、住宅ローンを組んでマイホームを購入しました。
しかし、景気が悪くなるにつれて給与も減給されてしまい、妻もパートで家計を支えていましたが、生活費と子どもの教育費もかかるようになり、消費者金融でカードを作りキャッシングをするようになりました。返済に困ると別のカードでキャッシングして返済するという自転車操業の状態が続き、これ以上の返済が困難となって、妻と一緒に債務整理をしようと相談にこられました。
当初のAさんの希望では、住宅を手放さないためにAさんは個人再生を、妻は自己破産をするというものでしたが、Aさんは税金の滞納額が多額で、市役所から自宅を差し押さえられていることがわかりました。
Aさんは役所と何度も協議を重ね、滞納している税金を分割払いする誓約をすることで差押を解除してもらい、個人再生の申立をしました。
しかし…
しかし、裁判所からはAさんの家計簿の状況では、滞納税金の分割払いと今後も発生する新たな税金の支払をしながら、債権者に返済を続けるだけの余剰がないと判断され、再生手続は断念しました。
その後Aさんは親族から資金援助を受けることができたので、任意整理に方針を変更し、各債権者とは一括返済することで和解することができました。妻は自己破産手続きをして免責となりました。
税金は債務ではないので、再生手続や自己破産手続きにおいても、滞納額が圧縮されたり免除されることはありませんが、税金の滞納がある、という理由だけで必ずしも再生手続ができないということもありません。
税金の滞納が多少あっても、役所との分納協議がきちんとなされ、その方の家計上に問題はない、と裁判所に判断されて再生手続を認められた例はいくつもあります。
税金滞納額や家計の状況によって裁判所の判断も異なりますので、債務額だけでなく、税金を滞納されている場合はその支払も視野に入れて方針を考える必要があります。