一般的に,過払金返還請求訴訟は,簡易裁判所よりも,地方裁判所に提起した方が,効果的だと言われています。
なぜなら,地方裁判所では,弁護士代理の原則(民事訴訟法54条1項)により,代理人が弁護士に限定されるため,貸金業者は,応訴のために,弁護士に委任して,弁護士報酬等の負担を強いられるからです。

ただ,地方裁判所に訴訟を起こすためには,請求額が,140万円以上であることが必要ですが,一つの業者に対して,いわゆる過払利息を除いた上で,140万円以上の過払金が発生することは,あまり多いとは言えません。

そこで,請求額が140万円に満たない複数の業者に対する過払金請求を併合して,請求額を140万円以上にした上で,地方裁判所に訴訟を提起する方法があります。

これに対して,被告となる各業者も,過払金請求の性質の訴訟(民事訴訟法38条後段の共同訴訟)では,複数の請求の併合を認める民事訴訟法7条本文の適用はないと主張して,各業者に対する請求額は,140万円に達していない以上,地方裁判所での管轄がないため,簡易裁判所に移送を申し立てることがよくありました。

しかし,最高裁平成23年5月18日決定は,原告が,1つの訴訟の中で,複数の業者を被告として,過払金返還請求をする場合に,数社まとめて,地方裁判所に訴訟を提起することができるという判断をしました。

ですので,1社1社に対する過払額が,あまり大きくなくても,複数をまとめて,140万円以上になる場合には,地方裁判所に,過払金返還請求訴訟を起こせるのですから,また一つ,業者に対する過払金請求にとって,借主側に有利な状況となりました。