10年以上前に破産申立をした男性Aさんのお話です。
家族はなくお一人で暮らしていました。年齢は50代後半だったと思います。体を壊して働けなくなり、生活保護で暮らしていました。
借金の原因は主に生活費の補填だったと思います。まだ働いていた頃の借り入れで、体調を崩して生活保護を受給するようになっても少しずつ返していたようでした。返済が難しくなってしまい、また市の職員からも生活保護費から返済をしてはいけないと言われて、相談にきました。
Aさんは末期がんで入院も決まっていました。打ち合わせ中も体調が悪そうでした。
打ち合わせの時に、別れた元妻との間に二人成人した息子さんがいることを話してくれました。子供たちが小学生の時に妻とは離婚して、子供たちにはずっと会っていない、今どこで何をして暮らしているのかもわからないとおっしゃっていました。この打ち合わせの時に、「破産しないで自分が亡くなったら、借金の取り立ては息子たちに行きますか?」とAさんが弁護士に聞きました。弁護士は「(息子さんたちに)行きます。そうならないように、早く破産を申し立てて、免責決定をもらいましょう」と話しました。Aさんは必要書類を一両日中に揃えて、事務所に持参しました。
Aさんの体調のこともあるので、できる限り急いで破産の申立をしました。Aさんは入院した後も必要なことがあれば携帯に電話をして、着信を確認したら必ず次の日には電話を折り返ししてくれました。
破産開始決定は無審尋で出ました。その報告をしたときは電話口でもかなり息切れをしていて体調が悪いことがわかりました。2か月後の免責の審問期日には外出許可を取って裁判所にいきますと言っていました。
免責の審問期日まであと一週間となった日、Aさんのケアマネージャーさんから電話があってAさんが亡くなったことを知りました。
「息子たちに何もしてやっていないのに、借金だけ残して死んだなんて言われたくない」って言っていたAさん。免責手続も終わっていればと思った案件でした。