取引先が地震による打撃で債務超過に陥りました。取引先の本社は埼玉なので、その不動産を処分して支払をしてもらいたいのですが、債権者の立場で破産申立をすることは可能ですか
特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律には、破産手続に関する特別の規定が設けられています。
同法では、著しく異常かつ激甚な災害であって、当該非常災害により債務超過(その財産をもって債務を完済することができない状態)となった法人の存立等に資するための措置が特に必要なものが発生したときは、この災害を特定非常災害として政令で指定するとされていますが、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震も特定非常災害として指定されています。
特定非常災害の指定がなされると、この災害によって債務超過に陥った法人について、政令で定める一定期限(今回は平成25年3月10日)まで、原則として、破産手続開始決定をすることができなくなります(同法5条1項本文)。
特定非常災害により債務超過となった法人の存立を図ることが目的です。
この場合、裁判所は破産手続開始の申立てに対して、その開始を留保する決定をしなければなりません(同条2項)。
当該決定に対して不服を申し立てることはできませんが(同条4項)、当該法人が支払不能(債務者が支払能力を欠くため、その債務のうち弁済期にあるものにつき一般的かつ継続的に弁済することができない状態)になるなど、留保決定をすべき事情に変更があったときは、申立て又は裁判所の職権により留保決定を取り消すことができます(同条3項)。
なお、この定めは債務超過に陥った法人を念頭においた規定なので、債務者が支払不能に陥った場合、債務者が個人である場合、債務超過に陥った法人自身が清算中である場合、自ら破産手続きの申立てをした場合(自己破産)には適用されません(同条1項但書参照)。