当社は、債務超過の状態であることから、融資を受けて何とか資金繰りをつけようと、担保設定していない唯一の財産である売掛金債権に債権譲渡担保の設定をして、新規に融資を受けました。しかし、結局、再建することができず、融資から3カ月後には、破産に至りました。
唯一の財産とも言える売掛金に債権譲渡担保を設定したことは、何か問題にされるでしょうか。既に負っていた借入金に対する追加担保として債権譲渡担保設定契約をした場合にはどうでしょうか

債務超過の状態で、破産手続の3カ月前に、売掛金債権に債権譲渡担保の設定をしている点が、担保設定を受けて優先的回収を受けられる債権者と他の債権者との間で不公平と評価しうることから、偏頗行為に該当すると判断され、否認権(破産法162条)を行使される可能性があります。

もっとも、破産法上、否認権行使の対象となる担保設定行為は、既存の債務についてなされたものに限定されているため、新規の融資のためになされた債権譲渡担保の設定行為は否認権行使の対象とはなりません。
一方、既存の借入金に対する追加担保としてなされた場合には、否認権の対象となり得ます。

偏頗行為に対して否認権を行使する要件は、
①破産者の義務に属しない債務消滅行為、担保設定等がなされたこと、
②その行為の後30日以内に破産者が支払不能になったこと、
③受益者が他の破産債権者を害することを知らなかったことです(破産法162条1項2号)。

本件では、売掛金に債権譲渡担保を設定したことは、義務に属しない担保設定行為に該当します。
そして、債権譲渡担保の設定から30日以内に破産者が支払不能に陥り、かつ当該売掛金について、譲渡担保設定権者が破産者の唯一の財産であると知っていた場合には、破産管財人により否認権が行使される可能性があります。