当社は、建築業を営んでおり、今後破産手続申立の予定です。会社には、銀行からの借入金のほか共に現場作業をしてきた下請業者や職人らへの支払が残っています。会社としては、従来から付き合いのある業者らに迷惑をかけたくないという想いがあり、下請業者や職人らへの支払いだけは済ませてしまおうと考えています。
このような行為は、破産手続をとる場合には、認められないのでしょうか。

破産手続申立を予定している状況で下請業者や職人らへ報酬等を支払ってしまうと、銀行にとっては、引当財産が減ることになり、債権者間において不公平が生じてしまうため問題となります。

そのため、このような行為が、支払不能の後になされた偏頗行為(債権者間の平等を害する行為で、特定の債権者だけが弁済を受けたり担保の提供を受けたりする行為)に該当すると判断され、否認権(破産法162条)を行使される可能性があります。

偏頗行為に対して否認権を行使する要件は、①既存債務についてなされた支払不能又は手続開始申立て後の債務消滅行為、担保設定等、②受益者が支払不能、手続開始申立等の事実を知っていたことです(破産法162条1項1号)。
ここで支払不能とは、債務者が支払能力の欠乏のためその債務のうち弁済期にあるものを一般的かつ継続的に弁済できない状態であることをいいます。

本件では、破産手続申立の予定であったため、支払不能の状況に陥っていた可能性が高いといえます。仮に、受益者である下請業者や職人らが、破産者が支払不能であることを知っていたと認められる場合には、破産管財人により否認権が行使され、報酬等の返却を求められる可能性があります。