当社は、恒常的に債務超過の状態となったため、遂に破産申立をすることにしました。当社は、不動産を所有していますが、事業資金の融資を受けた金融機関(不動産に抵当権設定した担保権者)に相談し、破産手続申立前にオーバーローン状態の不動産を売却して、売却代金を担保権者である金融機関に弁済をしました。
このような行為は、他の債権者を害する行為として、認められないのでしょうか。

破産者が、自己の財産を適正な価格で売却した場合には、かかる売却は、原則として否認権行使の対象となりません。
ただし、破産者が、自己の財産の売却により得た金銭について、隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分する意思を有しており、その購入者がそのような破産者の意思を知っていた場合には、否認権行使の対象となります(破産法161条1項)。

本件では、破産者は、金融機関に相談した上で、オーバーローン状態の不動産を適正な価格で売却したものと考えられます。そして、破産者は、売却代金を担保権者である金融機関に弁済しているため、破産者には隠匿等の意思は認められません。したがって、かかる不動産の売却行為は否認権行使の対象とはなりません。