先日、手形の不渡りが出てしまいました。もはやこのまま事業継続は困難と考え、同業者の仲間にその旨を相談したところ、現在、当社で所有している資材や重機等の動産類をもらい受け、今後も利用してくれるとの話がありました。その資材や重機等は売却しようと思えば、200~300万円の値は付くと思いますが、当社は、早晩、事業を閉鎖して破産することになるため、その話に乗じて、動産類を贈与しました。
このような行為は、破産手続上、何か問題があるでしょうか。
手形の不渡りの後に、財産的価値があるにもかかわらず動産類を贈与している点が、債権者の利益を害すると言えるために問題となります。具体的には、贈与行為が、詐害行為に該当すると判断され、破産手続において破産管財人から否認権を行使される可能性があります。
破産法160条3項によれば、支払の停止もしくは破産手続開始の申立ての後、又はその前6か月以内に破産者が行った無償行為は、否認権の対象となります。
ここで、支払の停止とは、破産者が、支払能力の欠乏のため、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できないことを外部に表示する行為をいいます。
本件では、破産者が手形の不渡りを出し、事業継続が困難な旨を同業者に相談していることから、支払の停止に該当するといえます。そして、動産の贈与は無償行為に該当します。したがって、破産管財人により否認権が行使され、動産の返還を求められることになります。