当社は、建築請負、不動産販売業等を営む会社ですが、昨今の不動産市況の低迷によって債務超過の状態が続いています。当社は、販売用地として、担保権を設定していない不動産を所有(時価3000万円相当)していますが、なかなか買い手が付かず、すぐに現金で支払をしなければならない負債もあったため、従来から付き合いのある同業者にその不動産を1000万円で売却してしまいました。
今後、資金繰りが好転することも見込めないので、破産手続をとろうと考えているのですが、不動産を安く売ったことは何か破産手続において問題があるでしょうか。
債務超過になっている状況で、3000万円相当の不動産を1000万円で売却している点が、破産会社の財産を減少させ、債権者の引当財産を減らす行為となるために、問題となります。
破産手続においては、破産者が債権者の利益を害するような財産侵害行為(詐害行為)や債権者の公平を害するような行為(偏頗行為)を行った場合には、破産管財人が、その行為の効力を失わせ、逸失した財産を破産財団に回復する権利が定められています。このような権利を、否認権といいます。
本件のように、債務超過の状況で不動産を安く売却する行為は、詐害行為と言えます。
このような詐害行為に対し、否認権を行使する要件は、詐害行為の存在に加え、①破産者の詐害意思、②受益者(破産者から財産を購入した者など)が行為の当時破産債権者を害する事実を知っていたことが必要です(破産法160条1項1号)。
本件の場合、破産者は債務超過の状況を認識しているため、破産者の詐害意思は認められそうです。
そのため、受益者である不動産の購入者が、購入当時、破産債権者を害する事実を知っていたこと、すなわち、破産者が債務超過にある事実を知っていたと認められる場合には、破産管財人により否認権が行使される可能性があります。