紛争の内容
ご依頼者様は、主に個人事業主の運転資金に使用するために、債権者5社からおよそ800万円を借り入れされました。
その後、新型コロナウイルスの影響で、個人事業がうまくいかず、借入の返済ができなくなり、当事務所に自己破産のご依頼をいただきました。
ご本人の財産としては、預金や保険の解約返戻金がありましたが、特に高額だったのは、仮想通貨であり、評価額はおよそ150万円でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
自己破産申立の準備が整ったので、裁判所に自己破産を申立てました。
ご本人が本来的自由財産の範囲を超える財産を有していたため、裁判所から破産管財人が選任されました。
仮想通貨について、ご本人の親族の介護をする必要があり、そのための資金が必要である等の事情を説明し、できるかぎり、ご本人の手元にお金を残せるように主張をしました。
本事例の結末
破産管財人がご本人の財産を調査し、仮想通貨の評価額を双方で合意し、自由財産(総額で99万円)を超える分については、財団に組み込まれるように指示がなされました。
その他に、特に免責不許可事由もなかったため、破産管財人からは、免責相当という意見が出され、裁判所からも無事、免責許可決定が出されました。
本事例に学ぶこと
本来的自由財産(総額で99万円)を超える財産を破産者が保有している場合、財団に組み入れすることがほとんどです。
ただ、子どもの進学や自身の医療費の発生の可能性など、将来的にまとまったお金が必要になる事情がある場合、99万円を超える財産でも自由財産として保有することが認められる場合があります。
そのため、たとえ、破産者の方が99万円を超えるような多額の財産を保有されている場合でも、それだけで直ちに諦めるのではなく、お金が必要になる事情がないかをよく検討し、主張できる事情があれば主張することで、自由財産拡張を認めてもらえることもあります。
弁護士 権田 健一郎