事案の概要
子らの専門学校や私立高校・大学への入学等のタイミングにあわせ教育ローンの申し込みを行い、生活費の不足分についてはカードローン等を用いて生活をしていたが、離婚に伴う別居で住居費等が嵩むようになり、また、勤務先の残業規制の影響で収入が減少したことで返済の目途が立たなくなった、現職は破産手続の職業制限にかかるため、小規模個人再生手続の申立てを選択したという事案でした。
申立時に提出された毎月の収支には大きな変動があったため、主として履行可能性の判断を行うため再生委員に選任されました。
主な業務の内容
開始決定前に本人と面談を行い、現在の収支の状況、今後の収入の見込み等について確認を行いました。
子らは学校を卒業したものの収入が安定しないということでしたが、自身が個人再生手続中であることを念頭に家計の中でどこまで助けるかの判断をしてほしいと伝えました。
毎月の収入は安定していたため、小規模個人再生手続を開始すること自体に問題はないと判断し、引き続き、家計管理についてチェックをしていくことになりました。
本事例の結末
その後、子らへの援助や親類の冠婚葬祭等で大きな支出となる月もありましたが、何とか毎月の収入や賞与を組み合わせることで返済資金の履行テストを含めてやり繰りすることができていたため、順次、再生計画の作成の段階に進み、無事、再生計画の認可に至ることができました。
なお、再生手続開始時までの遅延損害金により債権額の過半数を超える債権者が現れましたが、当該債権者から不同意意見が出されることはありませんでした。
本事例に学ぶこと
債務整理の方針を決める場合、基本的には、負債状況を踏まえ最も効果的な方法はどれかという観点が重要となりますが、債務整理の手段にはそれぞれ有利な点、不利な点がありますので、それらも考慮に入れて判断することになります。
本件は住宅ローンの借入れはなく、負債の原因についても教育費の占める割合が高かったため、効果の面では自己破産手続を選択する方法もあり得ましたが、自己破産手続中は職業制限がかかり、現在の仕事を続けることができないというデメリットを回避するという狙いから個人再生手続が選択されました。
債務整理の方針決定は多角的な視点から行うことが重要となりますので、ご参考としていただければ幸いです。
弁護士 吉田 竜二