依頼内容
東日本大震災の影響で収入が減少し借入れで生活費を賄う状態が続いていた、返済は給与や賞与を充てることで間に合っていたが、令和4年頃より取引先からの受注減等の関係で勤務先の経営状況が悪化し、賞与が不支給となる等さらに収入が減少したことで継続的に返済をしていくのは難しいと考えるようになった、住宅ローンがあるので個人再生手続を検討したい、とのご相談でした。
住宅を守るためには個人再生手続を行う必要がありましたが、借入先が少なく、うち1社が債権額の過半数を占める状況でしたので、債権者の意向を伺いながら方針を考えることにしました。
負債状況
住宅ローンを除き700万円程度
資産状況
めぼしい財産なし(住宅はオーバーローン状態)
方針・事件処理の結果
債権者の同意を必要としない給与所得者等再生手続の利用も検討しましたが、ご相談者様は独身であったため収入から算定される可処分所得が大きくなってしまい、現在の収支では可処分所得を前提とする再生計画を履行できる状況ではありませんでした。
そのため、債権者に小規模個人再生手続を申し立てた場合、手続利用に同意してくれるかの照会をかけることにしました。そうしたところ、実際に申立てを受けてみないと分からないという前置きはありましたが、現時点で不同意とすることは考えていないとの回答がありましたので、同回答を前提に申立資料を収集し、小規模個人再生手続の申立てを行いました。
裁判所で申立書類のチェックを行った後、再生委員を選任しない方式での小規模個人再生手続が開始となりました。
手続は進み再生計画案に対する債権者の意見聴取のタイミングとなりましたが、事前の照会のとおり、再生計画案について債権者から不同意が出されることはなく、無事、住宅ローン特則付きの再生計画が認可となりました。
本事例に学ぶこと
小規模個人再生手続は債権者の過半数(頭数及び債権額)から不同意意見が出るとそれ以上手続を進めることができません。
過半数債権者が存在する場合の対応としては、①債権者の同意を必要としない給与所得者等再生手続を選択する、②小規模個人再生手続で進める前提として債権者と申立以前に協議を行い同意の方針を確認しておくという2パターンが考えられます。
①のパターンでは直近2年分の収入から納税分や一定の生活費等の支出を除いた可処分所得を算定することになりますが、収入が多い、もしくは、扶養する家族が少ないという場合には債権額基準の返済額よりも大きな数字となることが多く、その数字を前提とする再生計画の履行は困難であるという状況もあり得ます。
その場合、個人再生手続を行うためには②のパターンで債権者から了承を取りつけるしかないということになりますが、債権者によっては明確に不同意の意向を伝えてくる場合もあります。
個人再生+過半数債権者ありという状況では様々な考慮が必要となってきますので、そのような状況において個人再生手続の利用をお考えの方は注意が必要です。
弁護士 吉田 竜二