自己破産の申立てには家計簿が必要になります。家計簿をつけたことがない方もいると思いますが、その提出は必須です。なぜ必要なのでしょうか、どの程度の期間家計簿の作成が必要かを考えます。

 

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自己破産の申立てには家計簿が必要

1 自己破産の申立てに必要な資料

自己破産の申立てには、住民票や給与明細書、課税証明書、通帳など、破産をする方の財産にかかる書類の提出の他、少なくとも2カ月の「家計簿」の提出が必要になります。

家計簿の提出ができないと申立てをすることもできません。

では、なぜ「家計簿」の提出がなぜ必要なのでしょうか。

2 家計簿が必要な理由

(1)自己破産の要件の確認(支払不能状態であるかの確認)

自己破産の申立てをする要件としては、「支払不能状態であること」ということが要件としてあります。

支払不能かどうかの判断は、借金が大きいということでは一律に判断できません。

やはり、現状で借金を返済することが不可能といえるのかということが必要になります。

収入が多くても支出が大きすぎれば支払不能と評価できるとすれば、支出を増大させ浪費をしていれば破産をして債権者に返済をしなくて良いということになることは困ります。

「家計簿」の中身として大切なのは、支出がどのくらいあるかということです。
家計簿の内容では「支出」がどのくらいあるのかが必要になってきます。

落とせる支出があり、支出を減らせば債務を返済できるということであれば、支払不能という評価をすることができる場合もあり得ます。

そのため、支払不能状態であるかの確認のために必要といえるでしょう。

(2)免責不許可事由の存否の確認

自己破産の申立てをしたとしても、免責不許可事由があると免責をすることができません。

免責不許可事由には浪費が入ります。

家計簿では、毎月の支出が明らかになります。
すなわち、月々どんなものにお金を使っているかがわかるようになります。

例えば、家計簿の中にお酒やたばこ、趣味に多額の費用を費消している、交際費の金額が莫大であるというような場合には、浪費と言える可能性もあります。

家計簿の内容をみることで、免責不許可事由がないかということも確認することができるため、必要といえることができるでしょう。

また、財産隠しや、偏波弁済も免責不許可事由となります。

家計簿に不自然に高額な支出が出ていたりすれば、偏波弁済をしている可能性がわかったり、またどこかに財産を溜めているというような、財産隠しを発見することもできます。

この点からみても、家計簿の確認が必要になってくるといえます。

3 「家計簿」には何を記載する?

家計簿には、家計の状況を記載します。

収入面では、毎月の給与収入(ご家族が一緒に暮らして一緒に生活費を費消している場合にはご家族の収入も含めて)を記載し、その他援助を受けているような場合には、援助されている金額を記載するなど収入を記載することが必要になります。

その他、前月の繰越金を記載していき、毎月の収入の確認と前月の繰越金を併せて現在の財産(特に流動財産の状況)を知ることができます。

支出では、毎月の固定費(家賃、光熱費、携帯電話代、保険代など)を記載するほか、日々の食費、交通費、交際費、娯楽費、日用品、教育費、医療費、被服費、雑費などを記載します。

弊所では、固定費の他、日々の食費等については、毎日記載していただいています。

このような家計簿の記入内容からすると、生活にいくら必要であるかどうか、無駄遣い(浪費)していないか、支出に見合った生活ができているかということが明らかになってきます。

4 「家計簿」はいつまで記載しなければならないか。

結論をいいますと、申立てに必要な「家計簿」の提出期間は、申立て前の最低2カ月です。
しかし、先のような免責不許可事由があるかを判断するケースでは、申立てをした後も、手続きが終了するまで、提出が必要になることもあります。

弊所では、受任後から家計簿をつけていただいていますが、申立てをする準備まで時間がかかりますから、2カ月で終了というわけにはいきません。受任後から申立てをするまで、申立てをしてから手続きを終了するまで、提出をしてもらう必要があります。

家計簿は、裁判所が破産の条件を満たしているか、免責不許可事由がないかを確認するだけでなく、家計が赤字になっていないか、浪費をしていないかということを確認することができるツールとなります。

すなわち、家計簿からは、いろいろな情報が得られるので、手続きが終了した後も、継続してつけることが自分のためにとって結果的には良いということになると思います。(一度破産した後の二度目の破産は極めて厳しいです。)

5 今「家計簿」を書いていないから破産できない?

ここまで読んでいただき、でも「家計簿」を書いていないから破産できないのではないか。とご不安な方がいるかもしれません。

ご相談をされる方で家計簿をつけていますということは非常に珍しいです。
破産の申立てはすぐにできるものではありません。

様々な資料の準備が必要になりますから、数カ月かかります。
その間にきちんと家計簿をつけて、家計の見直しを始めていただくことが必要になってくるところです。

そのため、家計簿を書いていないから破産できないということではなく、これから家計簿を記載して、きちんと破産手続きをしようと考えていただいた方がよいかもしれません。

6 家計簿の記載は正確に!

また、家計簿の記載は正確にしましょう。
万が一嘘のことを記載した場合には、虚偽の申告をしたことになってしまい、やはり免責されない(破産できない)ということになりかねません。

家計簿の記載、少し嘘ついてもばれないのでは?と思うことがありますが、繰越金の金額や、提出をしなければならない他の書類から、おかしな点は気づかれます。

また、大きな支出があった場合などには、領収書の提出を求められることもあります。

自販機で飲み物を買ったというような場合には、その領収書は持っていないということや、コンビニで領収書をもらい忘れたということもあるかもしれませんが、ある程度の金額の場合には領収書は発行されますし、領収書はしっかりともらい、保管しておきましょう。

それらのレシートや領収書を元に正確な家計簿をつけることを心がけることが必要になります。

なお、領収書のうち、提出が必要なもの(光熱費などの固定費の領収書など)もあります。

家計簿の添付に何が必要であるかは、ご相談ください。

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■この記事を監修した弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
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