生活保護を受給していたKさんは、がんを患っていました。
症状はすでに末期で、がんセンターに入退院を繰り返していました。
家族はいない、というお話でした。
2年ほど前まで仕事をしていたので、借金も返せていましたが、病気で働けなくなり、2年ほど借金を返済することができませんでした。
債権者は2社、総額は70万円でした。

大手のA社は、事情を説明して「それはお困りでしょう」と返済を求めてこなくなりました。
B社は、事情を説明しましたが、訴訟を起こしてきました。
消費者金融にも体力があるため仕方のないことです。
Kさんは、B社からの訴状を見て、当事務所に相談に来られたとおっしゃっていました。

破産を申立てた頃、Kさんは再度がんセンターに入院しました。
こちらから連絡があるときは携帯電話の留守電に伝言を残し、次の日に折り返しKさんから電話がかかってきました。
そんなやり取りを何度か繰り返していましたが、だんだんと電話口のKさんの言葉が聞き取りづらくなり、
また、息遣いが苦しそうで、病状が悪化していることがわかりました。
そんな中、実は別れた妻のところに2人の息子がいること、ご両親も健在であることもわかりました。
生きているうちに、破産して免責にならないと、今まで何もしてやれなかった息子たちに借金まで背負わせてしまうということを知り、
免責を早くもらいたいということでご依頼されたことがわかりました。

書面審理で破産の開始決定が出て、2ヶ月後に免責の期日が入りました。
その通知を病院に送り、病院のソーシャルワーカーから連絡がありました。
「Kさんは危険な状態です。2ヶ月後に裁判所にはおそらく出廷することはできないでしょう。期日
の10日くらい前になったら、病院から外出できない旨の診断書を送付します。」
というお話でしたので、その旨裁判所に上申しました。
免責期日まであと1か月の頃、Kさんが亡くなったという電話がKさんのお母様からありました。
Kさんのお母様には、免責前であったため、Kさんの息子さんたちに請求が行ってしまうこと、
相続放棄の手続きをする必要があることなどをお話して、電話を切りました。

あと1か月だったのに・・・
Kさんのご冥福をお祈りいたします。